デューク:
やっほ〜、デュークだケロ〜!
もうすぐハロウィン。人間たちも魔女の格好をしたりして楽しんでくれるこの季節にちなんで、きょうは魔女について西村佑子先生にお話を聞きにきたケロ!先生といっても、ロビンとは訳が違いそうケロ・・・!
西村先生:
こんにちは!デューク、初めまして!
デューク:
ところで先生、オレのことは知っているケロか?
西村先生:
はい。『シュガシュガルーン』を読みました。
デュークはショコラとバニラに、「魔方陣」の魔法を使って呼ばれていましたよね。
デューク:
そうだケロ!知ってくれてて、うれしいケロ!!
西村先生は、「魔女の秘密展」でもたくさん魔女のことを教えてくれていたケロね。
きょうはオレが直接、魔女について聞いちゃうケロ!
ファンタジーの魔女のはじまり
デューク:
世界にはショコラやバニラのほかにも、いろんな魔女のイメージがあるようだケロ。
西村先生:
そうですね。薬草の知識に長けた知恵のある女性や古代の女神なんて見方もあれば、ひたすら悪さをする存在だと考える人もいます。
デューク:
わ〜!全然違うイメージがあったケロね。
知恵があるなんて、ショコラも少しは見習ってほしいケロ…。
ちなみに悪さをする魔女は、どんなことをすると思われてたケロ?
西村先生:
困った事が起こると、「魔女のせいだ」と思った人間たちがいて。
これはファンタジーではなく本当の歴史上のお話しなのですが、ミルクやバターが腐ったり、悪い天気になったりすると、魔女のせいだとされた時代があったんです。あとは、男を惑わせる存在だと考えられたりね。
だけど、魔女かどうかなんて実際にはわからないから、疑惑が出た人を魔女裁判にかけて、拷問して白状させたのです。
デューク:
濡れ衣の上に拷問だなんて、ひどすぎるケロ…
でもそんな魔女たちがなぜ、物語や絵に登場するようになったケロか?
西村先生:
それは、ショコラたちの起源にもなるわね。
「ファンタジーの魔女」というのは、男性たちの妄想から始まったのではないかと思うの。
「魔女」という人間とは違う特別な存在を、セクシーな魅力を持ち合わせている存在としてファンタジックにとらえるようになったんです。
デューク:
人間の男たちが、魔女に恋をしたような感じケロね…。
西村:
たとえば、『アルナオネ』という小説があります。アルラオネは妖しい言い伝えのあるマンドラゴラ(マンドレーク)の別称です。彼女は人工授精で生み出された生き物で、男性を次々に虜にして破滅させる魔性の女として描かれています。
デューク:
へえ〜!ショコラがつかまえたマンドラゴラとは、大違いケロ!
西村先生:
そして、これは15世紀に描かれた「愛の魔術」という絵。
若い女性が火打ち石で赤いハートに魔法をかけています。そのハートは後ろにいる男性のものかもしれません。この女性が魔女かどうかはわかりませんが、ただ愛の魔術をかけるような女性は魔的な女と思われたでしょう。
デューク:
真紅のハート!ハートに魔法をかけるなんて、なかなかやるケロね! でも…素っ裸で、ちょっと刺激が強いケロ〜〜〜!
西村先生:
ふふふ(笑)。こうしてセクシーな魔女などが描かれているうちに、魔女に対するイメージは歴史的事実とはずいぶんかけ離れていって、様々なファンタジックな魔女が生み出されていくことになったんですよ。
魔女になりきるなら、ハロウィンより「ヴァルプルギスの夜」
デューク:
そういえば先生は毎年、人間界で行われる「ヴァルプルギスの夜」を見にドイツに行っているって聞いたケロ!
西村先生:
そう、ちょうどこの春もドイツのブロッケン山に行ってきたんです。
すごく綺麗な山で、高さは1142mほどと低めなの。登りやすい山ですよ。
ショコラたちと同じように、4月30日は色んな催しがあります。
デューク:
へえ〜!でもドイツまで泳いでいくのはちょっと、一苦労になりそうだケロ…。
ところで人間たちはみんな、魔女の格好をして遊んでいるケロか?
西村先生:
地元の人も観光客も、帽子やスカーフをかぶり、ホウキを持って、それなりに魔女の恰好をしてやってきます。魔女っぽいメークをしてくれる出店もあります。民家の庭や窓には魔女人形が飾られます。町のレストランでは「魔女の料理」が食べられ、この地域一帯はすっかりヴァルプルギスの夜らしくなるんですよ。
デューク:
魔界のヴァルプルギスの夜とはまた雰囲気が違って楽しそうだケロ。
オレも次のヴァルプルギスの夜は、人間界で遊びたいケロ〜!
おとなになった今、『シュガシュガルーン』から学びたいこと
西村先生:
ところで、バニラが女王になった後、ショコラとピエールが結ばれた後…『シュガシュガルーン』のその後がとっても気になってるの。
デューク:
確かに、みんなが気になるところケロね。
西村先生:
ショコラとバニラからは、学ぶことがたくさんありますね。
誰もが抱えている自分の心の闇やそれに立ち向かう姿とか、周りに流されずに、”自分の声”を信じることとか…。読者のみなさんには、そんなふたりの小さな魔女たちの姿を、おとなになっても見つめていてほしいですよね。
デューク:
なんだか嬉しいケロ!たしかに2人は葛藤しながらも、よく成長してくれたケロね。
西村先生:
災いや、”みにくいものの果て”に追いやられているオグルの姿も、かつて「魔女」と呼ばれて迫害された人たちの姿に重なるところがあります。
歴史の中の魔女も、ファンタジーで描かれる魔女もそれぞれの魅力があるので、『シュガシュガルーン』を通して、魔女という存在を改めて知ってほしいですね。
デューク:
そんなふうに言ってくれて嬉しいケロ!
そして先生、きょうはいろいろ教えてくれてありがとうケロ!
魔女について、すごく勉強なったケロ!!
ショコラやバニラの他にも、魔女と呼ばれる存在はたくさんいるんだケロ。
西村先生のお話をもっと知りたい人は、こちらも覗いてみて欲しいケロ!
でも、怖い話が苦手な人にはちょっとオススメできないから、気をつけてケロ〜〜〜!
<西村佑子先生>
早稲田大学大学院修士課程修了。青山学院大学、成蹊大学などの講師を経て、現在は執筆と講演の日々。これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県石橋町 ※現・下野市グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、薬草専門誌や新聞、雑誌に魔女関連の記事を掲載。2015年には「魔女の秘密展」(東映、中日新聞社企画)の監修。主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)、『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(ともに山と渓谷社)、『あなたを変える魔女の生き方』(キノブックス)など。